-25℃タイプの保冷剤による保冷温度テスト(コロナウィルスワクチンの低温輸送に関する実証試験)


コロナウィルスのワクチン接種が始まり、接種者数も徐々に増えております。ファイザー社製のワクチンは当初は-70℃で輸送・保管が必要とされましたが、徐々に温度管理が緩和され、-15~-25℃(-20℃±5℃)でも14日間は問題ないとなりました。(最近では1ヶ月は大丈夫とも言われます。)モデルナ社製のワクチンは-20℃の冷凍で7ヶ月、2~8℃の冷蔵で1ヶ月の保存が可能とされています。現在のファイザー社のワクチンはドライアイスを使用して極低温状態で保管・輸送を行ってますが、ドライアイスは固形の炭酸なので炭酸ガス(CO2)を排出します。ドライアイスは凍傷防止のため慎重な取り扱いが必要であり、値段も高価なためランニングコストが掛かります。尚、ファイザー社は2021年度末には-20℃タイプの新しいワクチンを出す予定と発表しています。


この様な実情から、今後は取り扱いの容易さとランニングコストを削減する事が可能となりうる、弊社で販売代理店として取り扱っているメーカーの-25℃タイプの保冷剤を使用してワクチンを安全に冷凍輸送出来るかを弊社の発泡スチロール容器と保冷剤を使用して温度実証試験を行いました。

1.使用する発泡スチロール容器

使用する発泡スチロール

写真右から
(1) KDI-20 (外寸410×370×425mm 内寸270×270×270mm)
(発泡倍率:20倍 青  肉厚50mm 内容量19.5㍑ )

(2) KS-11 (外寸412×252×286mm 内寸332×172×189mm)
(発泡倍率:30倍 白  肉厚40mm 内容量10.9㍑ )

コロナウィルスのワクチン輸送容器として実績のあるKDI-20と医薬品の輸送用に開発したKS-11の2種類の発泡スチロール容器を一緒にテストしました。

2.試験方法

「栃木県産業技術センター」にて恒温装置を借用し、外気温35℃の条件下で2種類の発泡スチロール容器内の時間経過による温度変化の測定を行った。容器の空間温度を測定するため、温度測定器が直接保冷剤に触れないように測定器に発泡スチロールで下駄を履かせた上で金属かごに収納し、それぞれの発泡スチロール容器に保冷剤と一緒に入れて測定した。(写真参照)

(1)恒温装置(栃木県産業技術センター)

発泡スチロール温度テスト

発泡スチロール温度テスト

(2)試験容器(カルックス製)と保冷剤(弊社の取扱品)

  (イ) KDI-20  (-25℃タイプ保冷剤を合計5kg投入) 
(イ) KDI-20  (-25℃タイプ保冷剤を合計5kg投入) 

(イ) KDI-20  (-25℃タイプ保冷剤を合計5kg投入) 

  (ロ) KS-11  (-25℃タイプ保冷剤を合計4kg投入)
(ロ) KS-11  (-25℃タイプ保冷剤を合計4kg投入)

(ロ) KS-11  (-25℃タイプ保冷剤を合計4kg投入)
 (KS-11に投入した保冷剤の一部が凍結不十分であったが、実験を進めた)

3.試験結果

試験結果

(1) KDI-20 (-25℃タイプ保冷剤を合計5kg投入)
試験結果グラフの通り、KDI-20は-20℃以下を25時間保冷できた。ただ、恒温装置の借用時間が1日だったため、それ以上の温度結果は出ていませんが、グラフからは28時間後でも-20℃をキープしており、前日の午後に準備して翌日の夕方までの1日程度の輸送時間であれば十分冷凍状態を保てることが実証されました。

(2) KS-11  (-25℃タイプ保冷剤を合計4kg投入)
KS-11には保冷剤の一部が未凍結の物を使用したので、実際に保冷できる時間より結果は短くなりましたが、-20℃以下を14時間キープ出来ることが実証されました。(凍結が完全であれば3~4時間の延長は可能と思われます。)

自治体の極低温冷凍庫からワクチン接種場所までの配送に際し、朝出庫してその日のうちに接種場所に配送して冷凍庫に入れるのであれば問題なく利用出来ます。

4.考察

冒頭で述べたとおり、ドライアイスは素手で長時間触ると凍傷を起こしたり、炭酸ガスが出るため風通しの悪い車内などでは酸欠症状を起こす危険性があります。またドライアイスは1回しか使うことが出来ず、その都度新しい物を多めに投入する必要があります。ドライアイスは高価で1kgあたり最低でも百数十円の費用が掛かる上、長時間ストックすると昇華して自然に減量してしまうので保管が難しく調達にも難が有ります。


保冷剤は初期費用として、保冷剤(大きさにより1個あたり200~500円を複数個準備)KDI-20に-25℃タイプ保冷剤5kgの場合、4~5000円程度それ以外に-40~-60℃タイプの冷凍庫が必要。また-25℃タイプの保冷剤は凍結に3日くらい掛かるので、毎日繰り返し利用する場合は1つの輸送容器に対して3~4回分程度の保冷剤を準備する必要があります。(隔日配送であれば、凍結に必要な日数を引いた分を準備)


ドライアイスを利用し、1回当たり2kgのドライアイスを使用、単価を150円として1年間に110回(週2回の配送)と仮定すると1ヶ所で33,000円の費用が掛かる計算です。(50ヶ所なら1年で約165万円のドライアイス費用が掛かります。)
保冷剤では初期費用として1ヶ所に3回転分の保冷剤を用意する仮定では約15,000円で、50ヶ所でも約75万円。冷凍庫も数十万円で設置できるので、1年でランニングコストが下がり、2年目以降は冷凍庫の電気代と保冷剤の補充程度となるので更に費用削減が可能となります。


なお、発泡スチロール容器は発泡倍率と製品の厚みで断熱性能が変わります。一般的な魚箱では、-20℃以下を長時間保冷することは難しいです。弊社で開発したKDI-20とKS-11は発泡倍率20~30倍で倍率による断熱性が一番高く、強度にも優れ、本体と蓋の嵌合部分の密閉性が高いため冷気が逃げにくく、高い保冷能力と壊れにくい丈夫さを兼ね備えた製品です。弊社では製品に合わせたバイアルホルダーも準備してあります。(別売です)


今後のワクチン輸送に関してmRNAは壊れやすいので凍結状態での輸送は必須ですが、管理温度が-20℃±5℃と一般的な冷凍庫でも保管できるワクチンが増える事が予想され、税金の無駄遣いをしないような配送条件の見直し時期が近い将来に来ることと予想されます。


※ワクチンの冷凍輸送関連商品が種々開発され販売されております。保冷温度テストに関して弊社のように試験装置・試験材料等の詳細・温度変化グラフを公開している物は、あまり見かけません。弊社は徹底した品質管理の下で製品を製造し、ユーザーが納得して御利用いただけますように保冷能力の実証試験詳細を公開致しました。


※なお、この温度試験は弊社内での試験であり、性能を保証する物ではありません。

その他 バイアルホルダー

バイアルホルダー

バイアルホルダー

弊社で販売するバイアルホルダーは1セット(ホルダー部と押え蓋部)25本入れ
KDI-20には1面に2セット並べておくことがでます(1段でバイアル50本)2段重ねで使用することで、バイアル100本の配送が可能です。KS-11には1セット収容可能ですが、保冷剤の収納量は限定されます。現在、少量輸送に向くKS-11用にバイアル9本入れのホルダーを設計中です。